「離職者が絶えない」「社員が言うことを聞いてくれない」こう言った相談をよく受けます。
そんな社長との会話から、社長としてやるべきことが見えてきます。今回は、そういった悩みの本質的な問題を解説していきます。
「人事制度をしっかり作って社員を安心させたい」という依頼をよく受けます。
「売上も順調に伸びてきて社員も増えてきました。そうなると給与にも評価を入れていきたいし、社内のルールも決めていきたいです。」
人事制度があれば人が集まると思っている経営者
一方で、こういう話もあります。
どういう人事制度か?の前に、なぜ人事制度が必要なのか?
「どんな人事制度かをお聴きする前に、なぜそう思われたかお話しくださいますか?」
「良い人材が集まりません。離職者が絶えないんです。頑張ればがんばるほど報酬が増えるような人事制度、頑張った分だけ報酬を出す仕組があれば良い人材が集まると思うのです。」
頑張った社員にたくさん給料を出してあげたい?
「頑張った分だけというのは、売上の何パーセントを報酬として出すとか?」
「はい。そうすれば、社員もやる気がでると思いますし、社員が稼いだ分だけ会社の売上も増えていきます。」
「営業職へのインセンティブのようなイメージですか?」
「はい。」
「つまり、製造現場の方の稼働率が上がれば売上が上がりますね。その稼働率に応じてインセンティブを高めるイメージですね。」
「はい。給与を含めて原価率から会社の賦課を引いて、それを上回ったら報酬に乗せたいと思っています。」
「なるほど。それは良いですね。ところで現在の稼働率はどうなのですか?」
「高い人は100パーセントを超えている人もいますが、低い人は60パーセントとか、ばらばらですね。」
「稼働率が低い人の違いは何でしょうか?」
「仕事をとってこないからでしょう。」
「・・・製造現場の方ですよね。自分の仕事は自分でとってくるのですか?」
「はい。営業を入れようとしたのですが、現場からは、こちらが欲しい仕事と意思疎通が難しいから営業はいらないと言われました。」
「では、自分で仕事をとってきて、製造して利益がでればその分を給料に反映するから頑張れということですか?」
経営計画はありますか?
「質問を変えます。向こう3年くらいでもいいですが、経営計画はありますか?」
「いいえ。ありません。」
「売上の計画はありますか?」
「年間の予算はあります。これです。」
「・・・受注予算がありませんが?」
「受注の仕事は社長である私の責任だと思っています。中小企業の社長の仕事はまず仕事をとってくることだと・・・。」
「それはある意味そうですね。さっきの稼働率が低い社員の話に戻りますが、その方の仕事も確保していますか?」
「いいえ。私は別の事業の仕事をとってきています。その方が利益率が高いからです。」
「では、話を整理すると、稼働率が低い社員が頑張れるように、受注をとってきてしっかりと仕事ををこなして売上を上げれば給料が上がるような仕組みを作りたい、そういうことですか?」
「はい。それで今まではうまくいっていたようなので。」
「・・・でも離職者が多いんですよね?」
「・・・はい。これなら業務委託の方がマシだと言われたことがあります。」
経営者が社員にコミットメントすること
社員を雇うということを真剣に考える
この事例で、私が違和感を感じたことが次の三点です。
1.社員を雇用する重大さがわかっていない。
2.重要な経営要素である、受注・売上予算を社長が関与せず社員に投げている。
3.それらを社員に示す経営計画がない。
社員を雇用する重大さがわかっていない
社員がその会社で働いている意味は、次の式で表すことができます。
公式 社員がその会社にいる意味 = 仕事が面白い × 生活が維持できる
給与が低くても、仕事に対する遣り甲斐や面白みがあれば、しばらくは頑張ることができます。
しかし、将来、家族を持つ、生計を考えるようになると、「面白いから」だけではやっていけません。
社員を雇用する場合、絶対に考えないといけないのは、その社員が働き続けられる給料を確保することです。
社長は、受注・売上計画に参画・関与し承認する立場
事業をどのように発展させていくかを考えるのは、社長一人の責任ではありません。
社内の意見も参考にします。社員の意見を参考にする理由は、社員が一番、市場や顧客に接していてい
ニーズを把握しているからです。
社長は、最終決断として予算を承認します。
決して、幹部社員に予算策定を丸投げしてはいけません。なぜなら、社員は安全な予算しか立てないからです。
しかし、「そういった予算を組んだ場合には、昇給原資が確保できないから自業自得だよね」というのは無責任です。
上場企業であれば、社長は株主に対してコミットメントしますが、オーナー企業であれば社員に対してコミットメント
するつもりで良いでしょう。なぜならば、予算をコミットメントすることは、社員の給与をコミットメントすることに
繋がるからです。
予算を承認し、給料をコミットメントする
上記のように人件費には、昇給原資、増員原資、賞与引当金が計画されます。
事業はすべてPLで表現されますから、予算を組むということは、人件費計画も組むことになります。
前述のように、受注・売上計画がないということは、人件費予算についても考えていません、ということと同義です。
賞与引当金を上手く使いましょう
しかし、いくら給料をコミットメントしたくても、いきなり昇給させることに躊躇する場合もあるでしょう。
その場合は、賞与引当金をうまく使いましょう。目標である〇カ月分に達するまで、毎月積み立てます。
総売上の〇%を賞与引当金として毎月積み立てるということも有効です。
そして毎月のPLと賞与積立金に額を幹部社員に共有しましょう。
まとめ
1.経営者は、社員が物心共に安心して働ける環境をつくるために努力すること。
2.その努力は、口だけでなく予算計画としてPLで表すこと。
3.この売上が達成すれば、社員の給料はこうする、ということを社員にコミットすること。
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